幻燈 2.
 
 
 
■ その頃私はE430に乗っていた。
 ウナギイヌのような、どこか無骨で、それでいてメルセデスの玄人からはやや軽んじられる型番である。
 踏めば文句なしに速く、レザーシートの造りは上等で、これがほとんど手を入れず12万キロを過ぎたものだとは俄かに信じがたい。
 200キロばかりの片道があったのだが、運転するのが面倒になるくらい安楽だった。
 ただしブレーキはAMGやE500などとは比べられず、踏めば減速してくれるという程度。入っているオイルでも違うのだろうけれども。
 
 
 
■ 市民社会の中で良い親父を演じるには、ゆっくりといいような気もする。
 中に三脚と布団を持ち込んでいたカメラマンがいた。