島尾さんの恐山。
■ 島尾さんが、大菩薩峠の9巻だったかに解説を書かれている。
(九)流転の巻。
時代小説文庫。カバーは横尾忠則さんである。
■ 島尾さんのそれは、数頁程の短い文章なのだが、もう10年ほど前古本で見つけ、時折捲っては記憶の隅にあった。
「うまく言えないが、『大菩薩峠』は私にとって幕末の日本を手がかりにした日本人論の百貨辞典のようなものだ(略)。私は青年期に『大菩薩峠』を読むことによって自分の中の日本人のさまざまな淵をのぞいてきたように思う(前掲:410頁)」
■ ここでひっかかったのは「淵」という表現である。