素のバン。
 
 
 
■ 天神坂の辺りで、紺色のマセラティが地下のパーキングから出てきた。
 乗られているのは、すこし髪のほつれた妙齢本格派である。
 ピンで留めている。
 
 
 
■ ほとんど堅気ではないのだが、それがどうしたという気配がある。
 スッド辺りもそうだったが、この辺りの伊車というのは、雨の後丁寧に拭いてやらねばならない。トランクやボンネット、またはドアの周囲をである。
 本格派がそうされているとはとても思えないが、それをさせている背後に少し興味があった。