シングルモルトの夜だから 4.
 
 
 
■ カウンターの中には、赤ではなく黒いチョッキを着た30代のバーテンダーがいた。
 壁一面の酒の瓶はそのままである。
 しばらくして尋ねると、1-2年ほど前に親父さんが亡くなり、後を息子さんが継いだのだと識れた。優しそうな、けれども表情の読めない横顔である。
 
 
 
■ 先客がひとりいて、背広姿の40がらみの男性である。
 鞄やネクタイの趣味から、土地の公務員かそれに準ずる仕事をしているのだろうと思われた。
 壁に貼られたシングルモルトの産地の地図を指さしながら、ここはあれで、と店主の後継者と夢中になって話している。