堅気のマセラティ 3.
 
 
 
■ とあるハードボイルド作家がマセラティに乗っていた。
 ビトゥルボから始まって、あれこれであるが、当時の私は少しにやにやしながら眺めていた。
 一度も浮気をしたことのない男が女について語る時、どうしてもオクターブ高くなる。
 いわゆる中年デビューである。