味について。
 
 
 
■ このところ、小型車ばかりに乗っていた。
 そういう仕事とまた日常だったからである。
 小型車それ一台ということになれば、例えばランチア・イプシロンの適宜やれた奴などがいいのだろうが、シートの手入れがどうにもならない。
 まあ、滅びていく風情を楽しむという境地に達すればいいのかも知れないが。
 とりあえず色気のようなものは水のように残る。
 
 
 
■ 久しぶりにエンジンをかけ、暖気する。
 3秒ほど手前、ガスを送ってからである。
 煩いな、という音がして目覚めるのだが、こうした場面の書き方は、大藪晴彦さんが一番旨かったような記憶がある。半ば愚直と言ってもいい。
 その後80年代に入ると車や単車は文化的様相を呈し、ポストモダンの波の中に相対化されていったのだが、その流れは実をいうと今でもある。
 
 
 
■ 桑原坂を下り、近くのスタンドで洗車をした。
 ここはガソリンの質がそう悪くない。
 線路の向こう側で、例えば数円安い看板にひかれ入れてみると、リッター4しか走っていないことがあって、貧乏性は損をする。