犬の目 2.
■ 省くことというのは、ある種の美学だという。
茶とか花、桂など数奇屋の世界にも通じるところがあって、例えば「天地人」という言葉は元々華道の世界からきていると聞いた。
それがどういう意味であるかは割愛する。
面白いのは、それを発見するのが外部の人間、この場合はオハイオ生まれで永く日本に住んで映画評を書いていたリチー氏だったというところである。
一般に外人向け日本美の紹介というと、ある種独特の癖のようなものがあることが多いのだが、不思議なことにこの本にはその印象は薄かった。
こう括っていいかは不明なのだが。
■ 私は難解な映画評というのは苦手である。
今まで最後まで読み通したものは、色川武大さんと田中小実昌さんのものくらいだったろうか。何故かといえば、博打の負け方と弁当の喰い方が好きだからだった。