犬の目。
 
 
 
■ 時々ではあるが、小津安二郎監督の映画をみかえす。
 粗筋ではなく、その場面をである。
 早送りをしながら目に付いたところを静止させ、その構図などを眺めていた。
 
 
 
■ 小津監督再認識のきっかけになったとされるドナルド・リチー著「小津安二郎の美学」(山本喜久男訳:フィルムアート社刊)が今手元にある。
 中に、カメラマンの宮川一夫が、山中貞夫もロー・アングルを多用し、それを「犬の見た目」と評したと書かれていた。
 身も蓋もない言い方であるが、子供の視線などと呼ぶよりは好みである。
 浮世絵、特に人物を描いたそれなどにしても、比較的低い位置からその構図を決めていることが多く、一瞬止まっているかのようにも見える。
 
 
 
■ 今奥付を捲っていたら、前掲書の発行は1978年とあった。
 独特の色調の装丁は栗津潔さんである。
 当事、DVDなどはまだなく、挿入されているシークエンスなどは相当苦労したようにもおもえた。