南本牧の角 2.
 
 
 
■ その日は打合せをすませ、都心部の地下駐車場から車を出したところだった。
 微妙な時間帯で、空が灰色に抜けている。
 手近なところのランプから首都高に乗ると、思いのほか空いていて、浜崎橋のJCTから海が見えた。
 
 
 
■ 今から10数年前、私は「夜の魚」という小説を書いた。
 そこではこんな風に出てくる。
 
「蒼白い塔が左手にみえている。
 近づいてゆくと、夢をみているような錯覚に陥る。夏のタワーだ。
 ちらりと海がみえ、高速一号線に入る。
 鈴が森で事故があった。
 赤い発煙灯が何本も落ちている。白い煙が低く広がっている。
 遠くまで見通せない。
 そう思うと雨に入った」