三倍速の夜 2.
 
 
 
■ リノ・バンチュラの代表作をあげることはできない。
 渋い脇役だからである。
 妙な色気があって、半分くらいは女性的であるとも言える。
 先に書いた「冒険者たち」という映画も、根の方には微妙な男色への傾き、そうした匂いがある。
 若い頃のドロンの出ている映画はそうした密度が濃いものだが、それが補助線のようになって青春のある本質を突くということになる。
 眺めている方は、それを意識しないものなのだけれども。
 
 
 
■ 当時のBMWのクーペは結構華奢で、オープンともなるとそれが目立った。
 色は白というところが相応しい。
 私はといえば、多分安いウィスキーを嘗めながら、なすすべもなく途方に暮れていた週末の夜辺りだったのだろう。
 さわさわと風が吹いて、木の葉が落ちる。