国境の南。
 
 
 
■ ある種、時代の匂いというものがある。
 作品が残るか残らないか、と大上段にふりかぶるのも野暮な話だろう。
 二大文芸賞と呼ばれているものが巷間あるが、近いところであってもその受賞者名をはっきりと覚えていない。
 この辺りなんとも言えないものがあるのだが、これはメディア自体の盛衰であって、私自身、小説を新刊で買うことはほとんどなくなった。
 数えてみると新書もである。仕事の資料以外には。
 
 
 
■ 30代はじめで半ばトホーに暮れていた頃、同じくトホーに暮れていた友人がいた。
 奴はアパートメントを出たところから、できたばかりの都庁など西新宿のビルが見えるのが案外の自慢だった。
 おまえこれ読めよ、と「トラブルバスター」を原作とした漫画を貸してくれたものである。
 巷ではマドンナが流行っていた。