乾いた夜 10.
■「まだ見ぬ書き手へ」という本がある。
丸山さんのものだったと記憶するが、今手元にはない。
なかなか挑発的で、全盛期のストーンズのような、それでいて端正な文章だった。
もう20年以上も前から、文学の世界で飯は食えなくなっている。
最も権威あると言われる賞の初版がいくつで、返本がいくつで。
そうしたところの印刷を一手に引き受ける社の方が、そうなんだよと言っていた。
■ JAZZの世界もそれは等しい。
国立大の音楽科を出た彼がいくつかのところを転々としてピアノ教室を開く。
コンクールでそうなった妙齢が、レフ版を当てられて顔が白い。
■ 腕はいいのである。
皆、それなりに才能もある。
違うのは何かといえばよく分らないが、そこに立っていて、あるいはうつむいていて、こちらに伝わる一本の震えではないかと思うこともあった。
そればかりでもないのだが。