乾いた夜 7.
 
 
 
■ さっきまで頭痛がしていたのだが、スコッチをショットで三杯嘗めたら忘れた。
 鶴のマークがプリントされたグラスで嘗めている。
 これは何時だったろう。
 自腹でいった時にはこんなものは貰えなかった。
 
 
 
■ ところで青山界隈であるが、墓地の近くにいいマンションがあって、そこは駐車場が広い。
 隣のビルに銀色の911が停まっていて、ここ暫くは空冷の964だった。
 何年もそこにあるから、新車で買って長いこと乗られていたのだろう。
 薄っすらと埃を被っている姿が私は好きだった。
 
 
 
■ 原宿方面から左へと曲がる。
 北欧の照明が飾られているところを過ぎて少しばかり加速する。
 見慣れた964がなくなって、そのいくつか次の型になっていた時には少しだけ驚いた。
 多分10万キロはいっていたのかも知れない。
 声をかければよかったのかな、とも思うのだが、冷静になればそれも無駄なのである。