二○ 虹橋空港
 
 
 
 
■ たいして飲んだ訳でもないのに頭が痛かった。
 口先の民主主義ってのに酔ったのだろう。
 翌日、夕方近くまで部屋の中でだらだら過ごした。荷物をつくらねばならない。
 夜になって電話が鳴った。公衆電話なのだろう、雑踏の音が混ざっている。
「さっき吉川さんきたよ。上海にゆくんだって」
 江菫だ。
 曖昧に返事をしていると電話が切れた。暫くしてかかってくる。
「変造テレカ使えないのよ、ここ」
 どこで手に入れているのか、江菫の適応力にすこし笑った。
「向こうにいったらね、わたしの姉さんのところにいって。手紙書いておいたからね」
 江菫は私に上海の住所をメモさせた。電話は共同のものしかない。わかった、と答えていると電話が切れた。
 翌日、私はH市の病院に寄ることにした。
 冴の部屋には入らず、看護婦に花を預けた。
 それから成田にゆき、上海ゆきの飛行機に乗った。四時間ウトウトとすると虹橋空港につく。
 入国手続きはそう難しいものではない。日本円をとりあえずの額だけ元に換え、手荷物を受け取ると空港を出た。声をかけてくる白タクを振り切り、シャトルバスに乗って市内に入る。外白渡橋・ガーデンブリッジを歩いて渡り、常宿にしていた上海大厦に部屋をとった。
 前金を多めに渡し、冷たい水を持ってきてもらう。
 何本か電話をし、シャツを脱いでベットに横になった。
 妙に眠い。ベットサイドの引き出しを開けるとそこには聖書はなく、誰が忘れたのか毛沢東のブロマイドがあった。