■ 五分ほどして、一艘のジャンクに引き上げられた。
中には吉川がいて、私をみるとウィスキーの小瓶を下腹から取り出して勧めた。
酒は塩の味がする。
ディーゼルエンジン付の小さな船には夢梁が乗っていた。小型無線機で何処かと連絡を取っている。
「生きていたんだからやらせてくれ」
吉川が葉子を口説いている。
「糖尿じゃなかったの」
私は夢梁の脚に触ってみた。白くて気持が良かった。
狭い船先で私たち三人は横になった。葉子の腹に頭を乗せ月をみあげた。誰の脚を抱いているのか、そんなことはどうでも良かった。
○「夜の魚」二部 外灘 E-了