■ 走羽がグレネードランチャーを発射している。髪の短い男は背中にM七二バズーカを背負い、茂みの中に消えていった。
「ともかくここを離れよう」
葉子の父が言った。
トラックから展開した兵士がAKを撃ちはじめている。
人海戦術だ。口々に叫びながら突進してくる。AKの先端には銃剣が光っていた。
私は小型無線機に向かって叫んだ。走羽を呼ぶ。
「早く逃げろ」
「先に行っていてください。ここはくいとめる」
DSに乗り込んだ。五人乗ると身動きが取れなかった。
葉子の父が義手で器用にハンドルを廻す。
応戦する。フルオートにしたイングラムを発射した。公安の男がコルトを抜き、後ろの窓から数発撃った。
「やっぱり四五口径だ」
葉子の父が言う。
背後で爆発音が起こった。炎がみえる。
髪の短い男が戦車のキャタピラーにバズーカをあてたようだ。
大きくバウンドしながらシトロエンDSは芝生の上を逃げる。最大にした地上高のおかげでほとんどサスペンションは動作しない。
何度も頭をぶつけた。公園に備え付けられたベンチをふたつ弾き飛ばし、DSは尻を降りながら舗装した路面に出た。
加速する。AKの銃弾は追ってこない。
「おい、戦車から白い服の男が出てゆくぞ。あれが北沢じゃないのか」
繋ぎっぱなしの携帯電話から吉川が言った。
「ヘリを隣のグラウンドに降ろす」
「よし」
DSを浦東体育場の脇にとめた。フェンスの鍵をイングラムで壊し、中に入る。
「わたしもゆくわ」
葉子がサンダルを脱いで後に続いた。手にはAR一六を持っている。