■ そこからの自分の行動を私は旨く説明することができない。
椅子から立ち上がり浴室に入った。
するすると下着を脱ぎ捨てると、熱いシャワーを長いこと浴びた。
ポンプ式のシャンプーで頭から躯を洗った。
垢すりのタオルが柔らかすぎる。ドアを開け、上着のポケットから煙草を取り出した。風呂の椅子に座って漠然と吸っている。
晃子が覗いた。
何も言わないで眺めている。浴室から出ると、新しい下着があった。
晃子のベットの脇に布団を敷いてもらう。
髪は濡れているが、乾くのを待つ訳でもない。
恐らく、今夜は北沢からの連絡はない。葉子の実家に電話をしてもほとんど意味もないだろう。さらわれた葉子がどのように扱われるのか、北沢の声で判断がつく。それに対抗する手段がほとんどないこともわかっている。
酒のグラスと灰皿を傍によせ、布団の上にあぐらをかいた。
「ともかく、寝よう」
暫くして晃子が寝室に入った。灯りが消される。
胸とその下の下腹に指を滑らせ、くぼんだものをかき分けた。
あらかじめ湿度ある沼のような重さが指に伝わる。
緩いものの中に入ってゆき、ただ動いた。まわすこともせず。
押さえた声が高くなる。脇の下から薄い匂いが昇っている。
懐かしいのかどうかわからず、暫くして眠りについた。
悪い夢をいくつかみた。
若い時の自分が、同じような過ちを繰り返している。
その傍に今の自分が立っている。
夢が醒めるとまた夢に入った。
それが夢なのだということはわかっている。
眠っている自分の布団から長い髪の毛が細くはい出してきて、かけてある毛布を持ち上げてゆく。
それを鋏で切ってゆくおかっぱ頭の女の子がいる。
その子の眼はあいているが見えず、赤い着物を着ていた。