■ 葉子は髪が伸びていた。私はグラスを持っている。
触る気持が起きるのを待っていた。
「わたしってね、たいていのことは旨くゆくんだけど、肝心なことがわからないのよ」
葉子が言った。
「こうすればこの人はこう動く、ってこともすぐにわかってね、相手に応じて器用に使いわけることもできるの」
「誰でもそうじゃないか」
「でもね、そうしていると自分がなにをしたいのか、段々わからなくなってくるの」
私は持ち込んだワインで餃子を食べていた。新築のホテルの部屋でポリ容器に醤油を垂らし、上品な餃子をつまんでいるのは不思議だ。味はいまひとつ。
壁が薄いのだろう。建物全体が合金の上に薄い石を張ったような造りだった。沢山のひとの声が微かに響いている。
「よく予約できたな」
「父に頼んだの」
「親父さんは何処にいるんだ」
「上海」
「上海で何をしているんだ」
「ビールを売っているのよ」
また訳がわからない。
「卒業したら上海にゆくわ」
葉子はそう言う。
私たちは赤いワインを飲んだ。ぬるくなってきている。葉子は短いショーツ一枚になっていた。その上に備え付けのバスローブを羽織っている。
そう大きくはない胸がみえる。
まだ芯が残り、強く掴むとはじめのうちは痛がった。