■ 橋の上から海がみえた。
 それは囲まれていて、何処に続くのかわからなかった。続いているのさえ俄には信じがたい。
 五速に入れっぱなしだとコーナーでふらつく。
 雑誌のこと、銃のこと、葉子との関係のこと。吉川に尋ねることはいくつもあった。何処かでそんなことをしても無駄だと思っている。
 私は晃子の胸の傷を思いだした。
 残るかもしれない、と彼女はひとことも言わなかった。
 どのような姿勢をとらされたのか、部屋には痕跡がなかった。
 晃子が省いた言葉のいくつかもあるのだろう。
 黒い道が続いている。次第に疲労が濃くなる。
 横浜のホテルに葉子は戻ってこなかった。弾は二発使われている。
 細かな雨になった。ワイパーが音を立てる。
 古くなった潮の匂いがして、葉子のいるビルに近づいた。