六 目線なし
■ 葉子は髪を切っていた。
肩までのものを更に短く、ほとんど私と変わるところがなかった。驚いた様子もなく私を部屋に入れる。
「毎日、海をみていたわ」
何もない部屋だ。サイドボードだけは大きく、古いウィスキーが何本か置いてある。
「冷蔵庫の氷だけど、飲むでしょ」
一杯だけ貰うことにした。バカラのグラスは重い。鉛が入っているからだ。
「さてと、説明してくれよ」
「あなたはいつも女に説明を求めるの」
葉子はきいた風な口をきいた。
私は鞄から雑誌を取り出し机の上に置いた。
カマロのシートにあった皮の鞄には、メモと一緒に一冊の雑誌とビデオが入っていた。高速の駐車場で中を開けたのだ。誰でもが買える雑誌で、投稿された写真が載っている。男が数人ひとりの女に絡んでいる。去年のものだが、御丁寧にその部分は折ってあった。目線もなく、髪の長い葉子だった。
私はその部分を開いた。
葉子は横を向いた。