ブルースウェイ。
 
 
 
■ ある日のことである。
 ボルボのV70 ですこし遠出をした。
 V70 というのは2.5リッターのワゴン。内装は革ではないが、大降りのシートは疲れなかった。
 運転はというと単にFF、あるいはFWD形式の普通の車である。タイアだけがピレリのP600を履いていて、当たりは柔らかいがそれ以上でもない。
 後部シートを半分だけ倒し、あれこれ荷物を積んでみたのだが、それが高さのあるものならばともかく、大型セダンとそれ程の差異はなかった。
 
 
 
■ 後部に棚を付け、三脚の脚を伸ばしたまま数本放り投げ、撮影をしていたという高名な風景写真家の方がいる。ボルボの前はスバルで、最も初期の頃はサニーだったというからにやりとしてしまう。ここで本格的な四輪駆動にいかなかったところが、この方のスタンスを示しているのだが、この辺りになると厄介な話になるので割愛しよう。
 当時の撮影機材も、AE-1,F-1.T-90 などが並んでいて時代なのだが、決してこのレンズの描写がなどという方向には流れなかった。ツァイスがどうだ、などとは言わない。
 基本はズーム複数本。
 撮影に速度感を導入したというのが、この方の新規性だったように思う。決して何日も同じところで粘ったりしない。取材にいけば、必ず成果を持って戻られる。
 
 
 
■ ボルボで峠を越えようとして、どうも気が進まず戻ることにした。
 エンジンの音はベーベーと煩い。踏んでも回転だけが上がって速度が伴わず、詰まらないのでTRC(トラクションコントロール)をOFFにしてみたが、後ろに荷物があることを忘れ、尻は流れなかった。
 この型番は外から眺めると、結構知的で格好よく見えるものである。
 世田谷や杉並などの山の手に、新車から生息しているかのように思える。
 実際そういう車が多く、数年前、深沢の辺りに240のほとんど走っていないものがあって、買わないかという話もあった。
 やや迷ったのだが、私は機材を積み込んで走るタイプの写真家ではないので止めにした。それよりも、その240のバリ物が赤だったのが気恥ずかしかったのかも知れない。
 あれ160も出ないだろうな、と思ったりする。