ひとつ前のAMG.
 
 
 
■ と、長々と書いてきたのだが、結局はメルセデスを選ぶことになった。
 ひとつ前のAMG。その最終型である。
 型番などは書くのを止めておく。排気量もである。
 
 
 
■ 北澤がメルセデスというのは、私自身も不思議である。
 最も似合わないと自らも自覚し、また廻りからも言われていたからだ。
 ここで90年代のAMGの歴史について語らねばならないのだが、まあ、エンジンとシャーシの最もバランスが取れた型番。その3万キロ余のものが見つかったのである。
 相場よりも随分だったが、この辺りの車は年式よりもその程度だという。
 BMWのアルピナのように敏感にハンドルが廻るというものではなく、定番の安定志向のものであるのは、30分走っただけで分かった。50キロ程度では脚が硬い。
 調整式のビルシュタインが組まれている。強化されたブッシュも入っている。
 これは横浜にあるその世界では知られたところで組まれたもので、私は別のメルセデスを見にその店にいったことがあった。
 ビルシュは一番柔らかいところから詰めてゆくことになるだろう。ホイルは新しい型番のものに交換されていた。あの年式のAMGホイルの塗装は弱く、細かなひび割れが例外なく生じている。
 この型番はライトが暗いのだが、キセノンが入っていたので後からいじる必要はなさそうである。夜でも薄いサングラスの私には、ライトは命なのだ。
 
 
 
■ 元々、ジャガーが欲しくてあれこれと動いていた。
 それが何時の間にか、最も嫌いだったメルセデスに変わる。
 今でもあのグリル、どうにかして欲しいものだと思っているが、考えてみると主に乗っている人たちが嫌いなだけで、車自体にはそう罪はない。
 それを証拠に、W124の形式の300CE、またはそのカブリオレなどは今でも大層魅力的である。
 300CEというのは3リッター、ツインカム。AMGがそのエンジンを手がけたと言われる。
 カブリオレも元の価格が1100.
 今では随分安くもなっているが、メンテナンスに同じだけ費やす必要もある。今回捜してもみたが、なかなか良い程度のものはなかった。
 いわゆる車好きの間では、メルセデスは、ひとつ前のものをシレっと乗るのが良いとされていた。
 シレっというのは二日酔いとは違う。
 寝癖を、空けたサンルーフの風でなびかせる程度だと理解すればいいともいえるが、果たしていかがなものだろう。