夜の海で。
 
 
 
■ また、短い旅に出ていた。
 重くてすこし密度がある。
 48時間ばかり続けて座っていると、こんどは尻のあたりが不調になる。
 途中いくつか仮想のバトルを眺めていた。
 すると実は相手が屈指の業師であることが分かってくる。騙されたり騙したり、他人を操作する術は一定部分で成功したが、それがあまりに性急なので、知らずに糸がほころんでくる。
 
 
 
■ 一体に、緻密な計算というものは、そのひとつの前提が崩れると後が続かないものである。旧日本軍の参謀には、そうしたタイプの男がいたと何処かで読んだことがある。
 筋書が狂うのはたいてい中心にいる女からで、今まで重要な役を果たしていたものが突然裏返る。
 彼女にとっては自然な流れなのだが、その自然さが理解できない。
 
 
 
■ 何時だったかの夜、私は車を流して東金にいった。
 海を眺めにである。
 時間が早かったので、浪打際の有料道路には係員がいて、小銭を払って窓をあけた。
 ふと思うのだが、例えば近くに住んでいて、そこに自転車で通い、窓口で帽子を被っている男達の昔はどうだったのだろう。