ドサ健、追証地獄。
■ 名作「麻雀放浪記」(阿佐田哲也)にはいくつもシリーズがあるが、追証については触れられていない。
この小説の一番のコクは、博打の技を極めてゆくことで、何か人間の一番大事なものを壊してゆくといった、成長が荒廃に通じる世界もあることを示唆したところであった。
ロマンとは言っても、肌のカサついた、相当に殺伐とした風景なのである。
そのことは、東京地方裁判所の喫煙ルームにいってみると分かる。
ブランド物を着た男や女たちが、何故かは知らぬがせかせかと煙草をふかし、呼ばれる順番を待っているのだが、不思議に誰も「東スポ」は持っていなかった。「世界」もである。
■ 西新宿のファミリーレストランへゆくと、今そのビルの上で説明会を受けたかのような若い男が、こうすれば必ず儲かるという話を聞いている。喋っているのは、昔モデルをしていたと称する妙齢中ほどから後半である。その時の宣材などを広げたりしていた。
最近はそれをノートPCで行う。
いわゆるこれがネズミ講、つまりはマルチ商法であるかのと感心したのだが、ファミレスでは舞台としていかがなものかという気もした。
これでクルーザーを買ったとかいう話も聞こえてきた。
若者はうつむいている。
彼の脇には、使い込まれたディ・パックがある。
自分もそうなれるだろうかと、思っていても口にしない。