- BREAKFAST AT TIFFANY'S -
太陽に暖められた石。
■ カポーティの「ティファニーで朝食を」(新潮文庫版:龍口直太郎訳)を、ぱらぱらと読み返している。
確か17くらいの頃、サガンか何かと並んで一度読み、それ以来忘れていた。
大人ぶっていたとしても、思春期の少年にはまだ早かったのかも知れない。
映画を観たのは劇場ではなくて、深夜のテレビだった。
なすすべもなく週末を送る、20代後半の夜だったような覚えもある。
1943年10月のあの月曜日。鳥の軽々と舞うにも似た美しい日。皮切りに、私たちはジョー・ベルの店でマンハッタンを飲んだ。それからジョー・ベルは私の幸運を聞かされるとシャンパンをおごってくれた(前掲:78頁)。
■ こう書き写していても、リズムがあり分かりやすく、情景が浮かぶかのような文章である。つまり、いい訳だということなのだが、これは主人公の売れない作家の原稿が、始めて活字になった際、ホリーとお祝いのデートをする場面である。
映画は、ホリー・ゴライトリーに、オードリー・ヘップバーン。
小説の「私」こと作家の卵、ポール・バージャックに、ジョージ・ペパード。
1961年、オードリーが32歳の時の作品であった。
■ 実をいうと、ここで映画を軸に語るべきか原作の小説にすべきか、私は少し迷うところがある。というのは、カポーティの原作は結構ハードで、苦いものを含んでもいるからだった。
通常の仕事であると、ここで映画のビデオやDVDなどを入手し目を通すものであろう。
なぜだか分からないが、今回それをする気にはなれず、漠然とした記憶だけで書こうと思っている。
つまりそれは、この作品がある種の古典になっているからかも知れず、オードリーも既にこの世の人ではない。
原作の設定は第二次大戦の最中。
映画自体も、当初マリリン・モンローにホリーの役がきて、モンローのエージェントがそれを断ったという経緯があるくらいだから、指折るとほぼ半世紀近く前の、そしてNYが舞台なのである。