風の吹く町 6.
 
 
 
■ 自分のいるべきところを捜すのが旅であると古来言われている。
 広義では、男性遍歴もそうだろう。
 ふたけたの純情というのはまれにあるものだが、旅をしすぎると微妙な垢のようなものがついて、いきあしが遅くなる(海軍用語)。
 船底に貝殻が付着するようなものだ。
 と言うと、覗き込んだ妙齢前半がいて、馬鹿だなと笑った。
 ミョウバンで色がとまるんだ。うそ。嘘だよ。
 
 
 
■ いわゆるネットの世界というのは、ある種の荒野なのではなかろうか。
 何のためかというと、自分を確認するためのものである。
 緑坂は飛躍が多くて理解しがたいという苦情がときどき届くが、さておき。
 携帯を握り締めている若い女は、少し前の「たまごっち」を思い出させる。
 男たちも、実生活そのものよりも例えばネットやブログの世界で「俺は」などと言ってみる。オレ様になったりする。
 あるとき無頼の風か。
 いやそうではなく、あるとき何ものかに自らを仮託しているという気がしてならない。