これから、どこへゆこう 3.
■ 自分の今いるところを眺めるには、短い旅に出ることだと先人は言う。
「旅行中」
とドアにぶら下げていたのは、カポーティ原作「テイファニーで」の主人公ホリーだった。
舞台は1943年である。
■ 私は煮詰まると、東京を半分だけうろつく。
量はあるけれども、とんでもなく不味いタンメンを食べたり、カメラを隠して路地裏に入り込んだりする。
このままここで暮らしたらどうなるのだろう、と、つげ義春さんに似たようなことを考える。実際どうもならないのであるが、暗くなりかかった堤防の土手の上をてくてく歩いていると、うらぶれこの身に吹く風悲し、と昭和初期の歌が口をつく。
昭和維新の夜だから、冷たい眼でみないで。
と、停めてあった車に戻り、ファミレスで泥のようなドリンクバーのコーヒーを飲むのだ。自分で取りにゆくのがなんだか侘しい。