東京場末気分。
■ どの土地もそうだが、この東京にも土地柄のようなものがある。
表向き口にすることはないが、例えば目の前のタクシーがウィンカーを出さずに左右に揺さぶって運転していると、大体が足立ナンバーだったりする。
三年に一回は窓を開け怒鳴ったりもする。
この季節、怖いのは青山墓地から下ってゆくT字路で、ヒルズ方面へ左折する車が、黄色は進めであると上海風に考えるからであった。
ABSが効いて尻を振ったが、よほどドアを開けて降りようと思った。
■ 先日、東京の外れ、河沿いの土地に所要あってでかけた。
八王子ナンバーのクラウンに若い奴らが数人乗っている。同じコイン・パークに停める。
「総長が駅にきているって」
「義理がさ」
この土地に集まる、プチ愚連隊の集団であるのかと分かる。集会があるらしい。
義理とは上納金のことで、収める金額によって組織の中の位が決まる。
どの世界も搾取されてゆくのだな、とまだ二十歳になったかならない彼らの横顔を眺めた。
■ 所要はすぐに終わり、私はカメラを持って商店街と裏手路地を歩く。
兎を飼っている煙草屋があった。兎小屋の周辺にはゴミが集まっていて、何時の間にかそういうことにされたらしい。
フェイク・ファーを着た若い娘とすれ違う。隣にはあっさりした顔の男が腕を組んでいる。家財道具を買いにきたのだろう、カーテン売り場のある方向に曲がってゆく。
駅前のロータリーには男たちがいる。
何をしているかというと、ワンカップを飲んでいるのだが、11月も終わりだというのに皆サンダル履きである。足を眺めると、何処からがサンダルなのか一見分からない色をしていた。
ロータリーのベンチに座って、暫く煙草を吸う。
ここは禁煙なのだが、誰も守っていない。
14,5の少年が私の隣にいる。彼はメンソールのようだった。