十二月のこのまっくらな真夜中に 2.
 
 
 
■ 六郷の辺りには伝説のオカマバーがあると聞いたことがあるが、定かではない。
 川崎の駅から暫くいった辺り、つまり警察署のある界隈は、いわゆるちょんの間で、昔取材に出かけたことがある。
 とはいっても仕事ではなく「夜の魚 三部 南春」の地取りのようなものだった。
 朝潮君という若い友人というか舎弟がいるのだが、彼がトヨタのバンで、ここが事務所なんだよ、と教えてくれた。その筋の方々である。
 普段はのんびりしている彼であるが、その時の眼光とハンドル捌きはたいしたものだった。
 
 
 
■ 牛丼屋で日本酒を飲むようになったら終わりだよ。
 と、彼はよく言う。
 二本までならいいんじゃないか、と尋ねたが、そんなに意思の強い人間だと自分で思う訳、と切り返された。
 グウも出ないときは開き直ることにしているが、どんなに深いところに入り込んだとその時に思えたとしても、所詮何かを書いたり写真に撮ったりする人間は余所者である。
 つまりせいぜいが仲のいいお客さんということなのだが、この辺り、未だ勘違いしているひとが多いので困る。