ディア・オールド・ストックホルム 2.
 
 
 
■ 皮底の靴は、10年ほど前に買ったCOMOである。
 そう高いものでもなかったような記憶がある。
 私はどちらかというと靴マニアで、チャーチからバリーなど、概ねのものは飯代を削って履いた覚えがある。週に数回が牛丼で、何が皮底かとも思うのだが、ま、そこは流れで。
 イタリヤ物は、格好はいいが長く履いていると足が痛くなった。
 かたちが綺麗なので、飾っておくにふさわしい。
 同じように、靴下に凝っていた頃もあって、全てがウールのそれを銀座界隈で買い、ほつれてくると同じような色の糸で繕っていた冬の夜もある。
 猫でも飼おうかとおもった。
 
 
 
■ 当時住んでいたところは、排気が外にでる大型のファン・ヒーターがあって、その前に靴下を置いておくと数時間で乾いた。
 出始めのそれだったものだから、結構な音がした。
 壊れたディスポーザーとともに、当時のモダン住宅みたいなものだったのだろう。
 窓を開けると東京タワーが見えていた。
 
 
 
■ そういえばその会合で、制服を着たお姐さんに、どこで着替えたのと聞いた。
 ホテルが用意してくれたんです。
 彼女は答えたが、帰りはどうするの、と尋ねると、このままの格好でタクシーに飛び乗るのだという。
 それは大変だな、そのヒールだけは脱いだほうがよかろう。
 そうですよね。
 とか言っていると、知っている顔の先輩格が近づき、北澤おまえは何をしているのだと後をまかせることになった。