眠りながら飛ぶ鳥 3.
 
 
 
■ 背中に湿布を貼らせる。
 蕁麻疹が出ているから、本当はいけないのであるが、痛いのだから仕方がない。
 ここで自慢をさせてもらうのだが、私が使っている椅子は数年前に買った輸入品である。
 広尾にあるショー・ルームにいって、あれこれ煩いことを言って試した。
 ライセンスで国産のものも、その後出たらしいのだが、サイズが小ぶりになっていて、一番のいいところがない。椅子の上で胡坐をかいて問題がなく、また自由に動く袖がついていることが必修科目でもあった。
 デザイナもモノカキも、胡坐をかいていることが多いのです。
 
 
 
■ 当時というか今でも、IT関係のデザイナやその他の方々が使う椅子は、見た目が第一である。座面がメッシュになっている某社のそれは、格好いいのであるが、長く座っているとズボンが擦れて粉になる。今はなき、銀座の日本橋よりにあったショップで店長に質問をすると、ともいえます、その場合には座布団を敷きますと答えていた。
 例えば、高輪の国道沿いにあるクリニックの高名な先生はそのようにされていた。
 昼のTVにも時々出ているから名前は売れておられる。受付の妙齢は不思議にやさしく、また冷たく、こちらの格好を見て馬の値踏みをしているのだろうと思われた。
 冷たいお茶もその他もタダで飲める。私は何時も二杯くらいを飲んだ。
 アレルギーの薬はそこで処方してもらった。
 
 
 
■ 椅子を換えてから、腰痛というのは車の運転以外には滅多におきなくなっていた。
 それが、久しぶりに背中が痛くなったというのであるから、どれだけディスプレイに向きあっていたことだろう。
 これも「これだけ頑張ったのだ、誉めて」という自慢である。
 ないしは誰にともない甘えである。
 日本には自然主義文学の流れというものがあり、言ったっていいじゃないか。
「動物のお医者さん」という漫画には、「オレはやったぜ」と何度も言う、暑苦しい犬が出てくる。