日の移ろい 3.
 
 
 
■ 重さ33キロくらいあるモニターをひいこら言ってアトリエつうか仕事場に運ぶ。
 有楽町の大手家電店の店員は、Mac担当だったこともあり、マニアであった。
 彼は静かに断固としてCRTを薦めていた。
 台車に乗せ、私が車を廻す間待っていてくれる。
 ここで缶コーヒーなどを奢って、一服。
 というのが本来は筋なのだろうが、昨今はそうもゆかない。
 
 
 
■ 設置してから矩形のスペースにうつぶせになる。
「からだがだるくて仕事がしたくない。若い日の日々はもう帰ってこない」
という島尾敏夫さんの一文が頭をよぎる。
 島尾さんの「日の移ろい」は最上の日記文学のひとつだが、深刻な中にもじたじたと滲むユーモアに似たものがあって、それは、こうなったら仕方がない、笑うしかないだろうというような開き直りにも似ている。そう書くと分かったようで嫌なものだが。
 昨年だったか、島尾さんの愛妻が入院している頃の日記が発表され話題になったが、そちらはかなり赤裸々なところがあって、私はまだ覗き込もうという気にはならないでいた。