青山あたり。
■ マイルスの「スケッチ・オブ・スペイン」の最後の曲は空腹に堪える。
惚れた女がいて、それと別れ、二年経っても忘れられないという時期に、ドイツの小型車で聴いていた。
路面の音が入ってくる。重いステアリングは減ってきたミシュランのタイアの突き上げを伝え、飛ばすとたまにキック・バックをくらった。
赤坂へ通じる陸橋はまだなく、青山墓地のコーナーでは、信号で停められることなく尻を流したりしていた。
感情を溜め込んで、それをひとつの方向に集める。
ボリュームをあげてみると、時々向こう側にいったかのようなトランペットである。
俺に構うな、と何か風景の中に立ち尽くしている。