冬の雀。
 
 
 
■ 灰色の空に鳥が飛んでいる。
 私はつかれて、使い物にならなかった。
「もう若くはないのよ」
 と、別れた妻に言われるのが深町丈太郎であるが、その頃深町はまだ30代半ばであった。
 今深町がもし勤め人なら、定年が近い頃合いである。
 古本屋で買った「部長・島コーサク」を眺めていると、団塊世代のネガとポジの関係にあるのが「事件屋稼業」であったと思われる。
 一方は大企業の取締役になってゆき、他方は横浜で恐らくは今も探偵を続ける。
 共通点は、別れた妻と娘がいることだ。
 
 
 
■ インテリヤクザ、黒崎を演じるには、やや枯れた原田芳雄さんがいいのかな、などと漠然と考えていた。河豚の立ち泳ぎの情報屋は、宍戸丈さんであろうか。
 ま、そうもゆかないだろうが、この季節、横浜というのは灰色である。
 街全体がモルタルでできているのではないかと思われる。
 私は本牧の辺りから脇道に入り、クリークの傍にある中華屋で不味いラーメンを食べるのが趣味だった。
 黄金町の辺りには近づかない。