ライカのお作法 3.
 
 
 
■ ズミルックス、1.4/50mm というレンズは、開放で撮るとかなり線が細い。
 そして独特のボケ方をする。
 これはサービス版でも分かるくらいで、描写としてはキャノンのFD、一時期レンズの標準機と呼ばれたそれの50mmと比べても、その違いは明白である。
 
 
 
■ と、薀蓄を書いてしまったが、一体にライカのM6というカメラはほぼ停まっているものしか撮れないと考えていた方がよさそうだ。
 ピントを合わせ、露出に気を配っている間に被写体が何処かへいってしまう。
 広角レンズであれば、被写体深度を利用してのスナップにも応用が利き、ピントを合わせずとも可能なのだが、ではLマウントの名レンズ、リコーのGR28だったかを買おうと思うとそれだけで25万ほどする。
 そのレンズの元になったリコーのGR-1、あるいはSの新品同様が何台買えるか。
 両者、写りは同じであります。
 
 
 
■ だいたいプロというものは道具にあまり過剰な思い入れをしない。
 結果を出すためにもっとも合理的で安定した道具を選択する。
 極端なことを言えば、レンズとフィルムさえきちんとしていれば、どんなカメラであっても作品は撮れる。風景写真に、連写機能などは重いばかりである。
 とはいっても、人からどのように見られるか、または見られたいかという欲望は、人間が社会的動物である証しのようなものであるから、これもまた無視はできない。
 合理性ばかりで作品はできない、と言いたい部分も残るのである。
「これ、ライカで撮ったんですけどね」
 と、いつか言ってやるもんね。
 などということを、使い込むうちに艶が出るという、馬の皮、コードバンのストラップに触れながら夢想していた。
 これナイロンだったら300円なのである。