神楽坂下。
■ 確か救世軍のアパートがあって、感心して眺めているとむこうからひとが歩いてくる。
私は所用あってこの路地に紛れ込んでいた。
タオルとビニールの鞄をもったその若い娘は、娘というには訳がありそうで、すこしこちらを向いている。
夏のなかほど七月の午後。
白いTシャツの下は薄い胸が透けている。
八重歯。
■ 目的の場所を尋ねてみると、人なつっこい顔つきでわからないと首を振る。
「洗濯してから稽古なんです。きたばかりで」
関西なのか何処なのか、言葉も肌もこちらでもない。
礼を言って暫く歩いた。
振り返ると、その半玉は踊るように急な坂道を降りてゆく。