水の祭の雨は白いよ 2.
 
 
 
■ どうして菱の花なのか、というと、多分それが売られていたからなのだろう。
 水槽に入れて部屋の中に置くのが流行っているともいうが、水草というのは少し汚れている方が正しいような気もする。
 すこし再掲してみる。この緑坂は「河童」。
 

 
      河童。
 
 
 
■ 品川南の天王祭その前夜、通りに面した櫓のなかではお囃子の最後の調子あわせが行われていた。
 五月の田植え月に続く六月は、水無月と呼ばれる。
 水の欠乏はひとびとの生活に直接の影響を与えた。
 一般に六月の祭は一日および七・八日あたりからその手続きが始まり、満月の十五日に至るとされていた。
十五日になると、各地の天王祭や祇園祭とむすびついてくる。
 そういえば北の天王祭、品川神社の境内の水飲み場には小さな河童の鋳物があって、ここでも水にまつわる信仰の流れがあるようだった。
 
 
 
■ 河童といい、カワゴといい、エンコやウソなどとも呼ばれているそれは、端的には水の精の変化であろう。水とはいっても淡水のそれであって、海とはまた違っている。
 この十五日が過ぎるまでは川に入ってはならない、というシキタリが残っている地方も多く、河童やカワゴが騒ぐからであるとされている。
 漫画家・水木しげるさんに「河童膏」という作品があるが、たいへんに面白い。
 河童と狐の恋であるとか、田に水を満たすため河童に娘を嫁にやるとか、糞尿に弱い河童と人間の戦争であるとか、なんだかよく説明できないが、ひとは河童を怖れながら共存してきたようであった。伝承のなかの河童は妙に義理堅い。
 
 
 
■ この夜、町の世話人が集まって明日の祭の支度をしている。
 踊るように飛び廻り、あちこちに声をかけている男のひとがいる。
 お囃子のなかには娘さんが入っていて、男たちの叩く太鼓に調子をあわせている。