風来 2.
 
 
 
■ 峠を降りれば半ば夏である。
 風が重くなり、まとわりついてくる。
 湖の近くのドライブインで、乾いた定食を食べた。
 ボクシングの日本チャンピオンの写真があちこちに貼ってある。
 出世龍、と書かれている。
 
 
 
■ 私は少しざらついたものを確認しに出かけたような気がする。
 都会でも地方でもそれは一緒で、こうだろうと望む風景は仕切られたものの中にしかない。
 今こうして書いていると、薄桃色のさくらというのは、誰かの血を随分と薄めたものではないかという気がする。
 実はそういう写真が撮りたいのではないかという気もして、少しうんざりしている。