高輪イエロー・フォグ 4.
■ ここで話は戻る。
奥の方に広い公園と、細い坂道を昇ればホテルのエントランスに通じる辺りから、70年代のメルセデスのセダンが出てくる。
六月の霧のような雨である。
通りに出たとたん、アクセルを深く踏み、流れの先頭に立ってしまう。
■ ここで解説をすると、やや旧い世代のドイツ車はアクセルが重い。
ちょっと踏んだだけでは、隣の軽にもハイブリッドにも抜かれてしまう。
一般に、この車出足がいいじゃないか、と喜んでいる年配の方々もいるのだけれども、それは電子制御されているからでして、入り口だけが敏感なのである。中がひろい。
踏むときはちゃん踏め。
間違えて足を降ろして、前を突っついたらどうなる。
そういう考え方があったとして、それを最後までやってしまうところがドイツ法学と申しますか哲学と言いますか、お国柄だったのである。
こちらの気分によっては、野暮な感じは否めない。