双子星のさだめ 2.
■ 常盤新平さんの「ニューヨーカーの時代」(1999年:白水社)を読み終えた。
ちょっと苦いものがあったので、半ばくらいで息切れしてしまっていたのだ。
常盤さんの様々な随筆、といってもその全てを読んだ訳ではないのだが、を眺めていると、いわゆるハリウッドの全盛期、50年代の彼我を意識する。
ちょっと乱暴な分類だが、一方でワイラーやヒッチコックの映画があり、一方で成瀬監督の作品があるといったような。
■ 常盤さんはアーウィン・ショーの「夏服を着た女たち」が、そうした世界への入り口だったと何度か書かれている。
粋で洗練された都市文化の断片。
そうしたものが、そこには「さりげなく」詰まっていると、常盤さんはいくつかのところで繰り返されていた。
■ 個人的にはショーの初期の短編のいくつかが好きである。
「80ヤード独走」だったろうか、元プロのフット・ボール選手が15年経ち、という小品は、30年代恐慌を生き延びてしまったF・スコット・フィッツジェラルドの変奏曲といった趣もあって、ちょっとばかり捨てがたい。