遠い海の記憶。
 
 
 
■ 三年前の緑坂を読み返していた。
 
 私はなんとなく別のことを考えていた。
 それはふるさとを追われたひとりの少年である。
 その土地には戻れないという。
(緑坂 5282)
 
 
 
■ あのとき黄色のランドセルを背負っていた少年は、この春少し大人になるはずである。
 金網に囲まれた場所がいくつもあって、その先には国道が続いている。