不良少年入門。
 
 
 
■ 出先から戻ってきて漠然としていた。
 机の脇に「参謀・辻政信」(河出文庫)が置きっぱなしになっていて、その写真がたいへんにうっとうしい。
 今扉を眺めると、写真は毎日新聞社。そしてデザインのフォーマットは粟津潔さんである。確かにこの色使いは粟津さんだった。
 
 
 
■ 古い読者なら覚えておられるだろうか。
 池島さんのこと、坂口安吾のこと。それから「麻雀放浪記」の作者、阿佐田哲也さんのことは何故だかわからないが薄く繋がっていて、時折思い出したように書いていた。
 阿佐田哲也さんはその随筆の中で、自分が10代の頃不良をしていられたのは、結局は背後に比較的しっかりした家庭があったからだ、と言われている。
 簡単に言えばいわゆる中産階級的価値観があり、そこからはみ出していったのだという自覚だった。
 
 
 
■ 逸脱するにしても、一定の軸がなければ逸脱にはならない。
 批判するにしても、またそうである。
 この辺りは極めて感覚的なものだが、例えば文章や作品を通して眺めていると、背後に潜んでいるだろう生活や文化の蓄積、上澄みのようなものが薄っすらと透けたような気になることがある。
 が、それがこちらの思い上がりからではないかと微かに躊躇う作業も待っている。