Blues-like 2.
 
 
 
■ 1.6リッターのメルセデスの小さいのに乗っていた。
 最近随分手頃になってきたそれで、安価なのには理由があるという。
 ATがある日突然ゴキリといくらしいのだが、確かにアイドリングしている時の音はベランダに置いた洗濯機の断末魔という風情である。
 後部座席を半分倒し、大きなケースを入れたりした。
 
 
 
■ ある夜、床まで踏み、高速を少し飛ばし気味にしてみる。
 ティップ・シフトを忙しく操作し4000回転くらいを保ってみる。
 すると案外に速いもので、市街地では重過ぎると感じたパワステも、レンジローバー並みの回転半径も気にならない。エルク・テストでひっくり返った経験から、徹頭徹尾安定志向ではあるけれど、ASRを解除すれば路面が湿った花園橋の下りで軽く尻は流せるんじゃないかという気はする。
 良い子は真似してはいけません。
 ブレーキはかすかにオーバー・サーボだが、踏んでいくとコントロールできる感触は伝わってくる。
 やっぱりそういう車なんだよな、と吐息をついた。
 骨格がドイツなのである。
 気づくと、ポケットに入れた缶コーヒーがこぼれていた。