二月尽 2.
 
 
 
■ 昨夜、外気は0.5度だった。
 よく晴れていて、昼間のあいだ都心部は通行止めになっていた。
 円谷が走ってから何十年経つのか。私の記憶はあのあたりで止まっている。 天現寺の入口が工事中なので、目黒から高速に乗る。近くにある美術館も永いこと修復工事をしているらしく、暫く漠然としにいっていない。
 
 
 
■ 緑坂 6278 の作品を眺めていると、成瀬監督の「女が階段を上る時」(1960)という映画を思い出した。映画そのものではなく、そのスチールである。
 高峰秀子さん演じる銀座のホステスが、一国一城の主になる。
 確か安い10円寿司の二階なのだが、その木造の階段を高峰さんが上っていくところを下から捉えたカットで、身体の捩じり方に不思議な色気がある。
 縞柄の着物のラインがなまめかしい。
 陰影が計算されているところから、これは周到に用意されて撮られたものだったのだろう。つまりライティングである。
 
 
 
■ それにしても、10円寿司というのは時代を感じる設定だった。
 トイレが共同で、というところが泣かせるのだけども、そうした飲み屋やバーというのは新橋から銀座界隈に今でも残り、ある程度年配の方などが自腹で酒を嘗めている。
 ただのおじさんかと思うと、びっくりするような肩書きだったりするので奥が深い。