目玉 3.
 
 
 
■ そういう話をしているのではなかった。
 吉行さんに「目玉」という透明な作品集があって、私は好きだった。
 なるべく自分を突き放して眺めていると、知らずに諧謔のような部分が滲んでくるのだが、これは分かる人には分かるといった類のものでしかない。
 まれに、ニュアンスが伝わったかのように視える女性もいるが、その場合えてしてこちら側に近寄っているのでお相手としては微妙である。
 そういう話がしたいのでもなかった。