本牧メルヘン。
 
 
 
■ 旧いM5が手頃な値段で出ていて、こころ動かされる。
 E28、初代のそれが好きである。
 まだ野蛮だった頃のアルピナの3.5なんかもいいのだろうけれども、直6DOHCのそれをこつこつ仕上げ、夜の首都高を軽く流すなんてことに憧れる。
 多分、車両価格の倍はかかるんだろう。
 革シートなら手入れが楽だが、布のそれはもう部品がないのかも知れない。
 時代錯誤の楽しみ、というよりも道楽で、冷静になれば今の車でもそれに似たことはやっていた。
 
 
 
■ 国際埠頭のあたりで缶コーヒーを買う。
 100円と定価のところとがあり、20円の差というのは大きい。
 が、アイドリングを数分続けていればそれくらいは消費する。
 用もなくここにいることが無駄なのだ。
 
 
 
■ 70年代の頭頃、ジョニーという単語は比較的一般的だった。
 五木寛之さんには「海をみていたジョニー」という名作があるが、「本牧メルヘン」の世界はそれを踏まえて創られている。ジョニーはベトナム帰りの黒人兵士。
 はじめに口笛が入り、ロカビリー出身の鹿内孝さんが野太い声で歌う。
 けれどもどこか震えていて、ここ10年、月に何度かは車の中で聴くのである。