三光坂。
 
 
 
■ 伊皿子の界隈にいた頃、三光坂は知らない土地だった。
 ちょっと奥地過ぎて、知るひとぞ知るといった按配である。
 白金台界隈が、陸の孤島と呼ばれていたのだから仕方もないのだが、あの辺りの風情は好きである。
 昇ったり下ったり。
 細い路地を抜けると、町工場だった一角があって、二階から爺さんが私をにらんでいた。