霞かな 4.
■ 先に悪口だけを書いておく。
主演の田中泯さんの手の甲があまりにふっくらされているのである。
爪が綺麗なのである。
はじまって10分ほど経ち、私はいただいたパンフレットに「指」と書いた。
田の中で舞う場面もあるが、そこでも太ももがたくましい。
栄養足りてんだな、という按配である。
そうでなければ演じられない。わかっちゃいるんだがそこは流れで。
■ 田中泯さんは、土方巽さんの流れを汲む方である。
土方巽さんといえば暗黒舞踏もそうだけれども、民俗学の分野でそのモデルにもなっておられる。
写真家は季刊「東北学」の中枢メンバーのお一人。
書きすぎるのは野暮なのでお名前は省かせていただく。
■ 井月が次第に老い、ヨタヨタしていく場面の演技は見ものである。
メイクの方の腕もそうなのだろうが、田中泯さんのなかば執念だろう。
時代劇が好きな方なら藤沢周平さん原作の、幕末の侍を描いた傑作を覚えているだろうか。
「たそがれ清兵衛」
田中さんはそこで切ない役柄を演じられている。