光について 2.
 
 
 
■ 舞台照明の先駆者、篠木佐夫さんの本を読んでいた。
「篠木佐夫のあかりの仕事」(JPL編集部編:未来社刊:2008年)
 半ば遺稿集のようなものである。
 
 
 
■「照明がなければ、どんな素晴らしい舞台や作品、俳優、女優の表情や演技も、すべては闇の中に塗り込められ、観客の目には見えなくなってしまいます」(前掲:7頁:はじめに)
 と始まるものだが、佐夫さんというのは芸名で、当時姓名判断に凝っていた山田耕作さんが勝手につけたものだというイキサツがおかしい。
 山田耕作さんといえば「からたちの花」など、今聴いても密かに泣ける名曲の数々を作られた額の広い方である。
 
 
 
■ 全部銀座のカフェで飲んじゃった。
 博打してたら、おまえは中学出なんだから前科になるぞと訓戒で済まされた。
 などなど、ある意味で歴史的に没落してゆく中産階級の子弟が、辿るべくして辿った道を歩まれた方のお一人でもあったのだろうが、演劇や映画の世界というのはもともとそういうものである。
 フリョーだ。
 世代は違うけれども、色川さんこと阿佐田哲也さんが同席されていたら、どう酒を飲まれたかなど、私は薄く思うのである。