女百話。
 
 
 
■「今は実に危機一髪」
 
「女百話?本書の特色は百話のすべてが女性の口頭から発している点にある、これをば単に面白い思い付だというて片付ける人があらば、それは余りに軽率である」
 
 
 
■ で、始まる文庫をぱらぱらと捲っている。
「明治幕末 女百話」(篠田鉱造著:岩波文庫:青469-4)という本で、いわゆる「幕末百話」「明治百話」に続く聞き取り三部作。
 先にひいたのは序文だが、この続きが面白いので引用する。
 読みやすくするため、適宜改行と漢字をひらがなに直した。
 
 
 
■「全体女性は男性と異なって語る機会を有たぬ、公然語ることは尚更である。随て(したがって)女性の語ることは隠れたることが多い(略)。
女性は概ね感情的で、その歓楽は微に入り細に入る。
男性が大まかに気にも留めないことを、女性はぬかりなく掴む。
男性が聞き流しに附することを女性はのがさず記憶する。
男性は多くの場合、さじに頓着しないが、女性はかえってこれに興味を有つ。
ともすると、男性は自分から成したことすら記憶しないことがあり、物の歓楽も往々にある。尚、(以下、延々と理由が続く)」(前掲:3頁)